2012年6月5日火曜日


多くの方が腰痛や頚部の痛み、下肢痛を経験した事があると思います。 人間には自然治癒力が本来ありますので、多くの場合、一過性の疼痛で時間的な経過で軽減していく事がほとんどです。
また症状が強い時は、早く疼痛を軽減するのを目的として 病院などの医療機関では

  • 外来での薬物治療
  • リハビリ治療
  • 神経ブロック治療
  • 日常生活での改善、運動療法の指導
などが行われます。
頸椎椎間板ヘルニアでの上肢への放散痛や坐骨神経痛などの神経性疼痛には、MRIなどで責任神経レベルを診断した上で、神経ブロックなどが特に有効です。
ブロック治療は疼痛を起こしている神経周囲に局所麻酔剤を注射する治療法です。一般に整形外科・ペインクリニックなどで広く行われている治療法です。
麻酔剤の効果は通常1〜2時間程度ですが、局所循環の改善や疼痛悪循環経路の遮断などによって、痛みが長期に渡り緩和される事が知られています。
疼痛が主体の病態で、薬物療法・リハビリ療法の効果が薄く日常生活に困る程度の痛みに対してはブロック治療が効果的な場合があります。
当院での外来でおこなっているブロック治療は以下の通りです。

ブロック治療

○ 選択的神経根ブロック
○ 椎間板ブロック
○ 椎間関節ブロック
○ 腰椎硬膜外ブロック 仙骨裂孔ブロック
○ 星状神経節ブロック

*頸椎神経根ブロックは入院にておこなっています。
*腰椎硬膜外ブロック・星状神経節ブロックは麻酔科医によっておこなっています。
*選択的神経根ブロック 椎間板ブロック 椎間関節ブロックはレントゲン透視(イメージ)下に行われます。

一部の方で、上記の保存療法にもかかわらず、長期に渡って日常生活に支障をきたす疼痛、進行性の症状の増強、運動麻痺、神経の腫瘍などは手術を含めての検討が必要となってきます。

脊椎・脊髄を扱う手術は、整形外科全体の手術の中でも難易度の高いものです。 私たちは今までに多くの脊椎・脊髄手術を手がけてきましたが、患者様に保存療法、手術療法の選択に関して充分に説明し納得して いただいた上で、最善の治療を進めて行く事を心がけています。

当院では脊椎・脊髄手術は2004年からLeica社製手術用顕微鏡(上図参照)で行っています。手術用顕微鏡では明るく拡大された三次元的視野が得られるため、繊細さが必要とされる脊椎脊髄手術であっても安全に手術が出来るのが特徴です。手術用器械も顕微鏡・内視鏡用の開窓器・器具などを使用し筋肉・骨組織・神経組織に対して低侵襲手術をおこなっています(棘突起縦割椎弓拡大術・skip laminotomy・顕微鏡下外側開窓術など)。

患者様の不安の一つとしての手術後の痛みがありますが、手術後の疼痛管理にも工夫を行い、術後疼痛を極力減らしています。術翌日からの早期のリハビリテーションがスムーズに行えるように心がけています。約95%の術後の患者様で翌日から歩行が可能です。またほとんどの患者様は、術後2週間で退院・日常生活への復帰が可能です。

近年は高齢者の腰部脊柱管狭窄症の手術が増加しています。70歳〜80歳代、場合によっては90歳代の患者様が増えています。 ほとんどの手術後の患者様が、軟性(ダーメン)コルセットもしくは頚部カラー固定で、手術翌日から歩けるために術後の筋力低下、認知症などの合併症がまず無い事から、 今後も手術適応症例の方は増えて行くと思われます。

当院は福岡市内でも有数の脊椎・脊髄手術症例数(年間200例前後)を誇っています。整形外科開業医・一般病院・脊椎外科が無い総合病院からの紹介患者様が多いのも特徴です。 脊椎・脊髄手術は同一疾患でも、手術方法が病院施設間でも違うのが現状です。多くの場合は骨性要素・靭帯性要素・椎間板性要素などの神経圧迫や椎間の不安定性などが疼痛の原因となっています。

手術術式は大きく分けて除圧術と固定術に分けられます。
術後の不安定性の原因となる脊椎後方支持組織の主要な要素である椎間関節を顕微鏡下に極力温存する低侵襲手術をおこなう事によって、除圧術での治療成績を向上させています。
当院での過去5年間の固定術の割合は全脊椎症例の5〜15パーセント程度です。

除圧術の特徴
・筋肉剥離、骨切除量も少なく本来の椎間の動きが温存される。
・隣接椎間での障害は長期的に少ない。
・手術時間・出血量の軽減、感染を含めた合併症の頻度が少ない。
・万が一感染が起こっても長期化の恐れはまず無い。
・将来の不安定性(すべり)増大の可能性、椎間板性腰痛・不安定性腰痛の遺残の可能性がある。
※当院では、椎間関節を極力温存し不安定性の増大の危険性を減らしています。

2012年6月3日日曜日


(シンポジウムレポート)気分障害の生物学的研究の最新動向

2009年12月11日(金)、津田ホール(東京都渋谷区)にて、東京都精神医学総合研究所第38回シンポジウム「気分障害の生物学的研究の最新動向―DSM、ICD改訂に向けて―」というシンポジウムが行われました。
その聴講レポートをお送りします。

「気分障害の生物学的研究の最新動向―DSM、ICD改訂に向けて―」
平成21年12月11日(金) 津田ホール(東京都渋谷区)


1.オーバービュー「気分障害の生物学:どこまで理解できたか、何が問題なのか」
  (九州大学大学院教授・神庭重信氏)

うつ病は異質な疾患の集合体
うつ病は抑うつ気分を中心としながらも、不安や離人症状、妄想、身体症状など多くの精神症状を巻き込む病気で、「典型的なうつ病」というのは臨床の場では少数です。
そしてうつ病の原因についても、現在では遺伝子、環境、母子関係、幼少時の体験、性格、人生の出来事など、いくつもの因子が複雑に関わっていることがわかっています。

うつ病の原因に関する主な仮説
・遺伝子仮説
双子の研究により、うつ病を発症するかどうかの4割が遺伝的に決まっていることがわかりました。
また、神経の発達・炎症に関わる遺伝子とうつ病との関係も最近研究されてきています。

・神経化学仮説
いわゆる「モノアミン仮説」というのは、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンのどれかが不足するとうつ病となるという仮説です。
しかし、SSRIなどでセロトニンが増えても、実際に効果が現れるには数週間かかるという矛盾があり、疑問視されています。
最近はモノアミン仮説に代わり、BDNF(神経成長因子:神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進などの神経細胞の成長を調節するタンパク質)の低下が関係するのではないかと言われています。

・セロトニントランスポーター遺伝子仮説
セロトニントランスポーター遺伝子の長い人は、うつ病になりにくいことがわかっています。