2012年6月5日火曜日

脊椎脊髄病外科 | 特徴 | 佐田病院(福岡)


多くの方が腰痛や頚部の痛み、下肢痛を経験した事があると思います。 人間には自然治癒力が本来ありますので、多くの場合、一過性の疼痛で時間的な経過で軽減していく事がほとんどです。
また症状が強い時は、早く疼痛を軽減するのを目的として 病院などの医療機関では

  • 外来での薬物治療
  • リハビリ治療
  • 神経ブロック治療
  • 日常生活での改善、運動療法の指導
などが行われます。
頸椎椎間板ヘルニアでの上肢への放散痛や坐骨神経痛などの神経性疼痛には、MRIなどで責任神経レベルを診断した上で、神経ブロックなどが特に有効です。
ブロック治療は疼痛を起こしている神経周囲に局所麻酔剤を注射する治療法です。一般に整形外科・ペインクリニックなどで広く行われている治療法です。
麻酔剤の効果は通常1〜2時間程度ですが、局所循環の改善や疼痛悪循環経路の遮断などによって、痛みが長期に渡り緩和される事が知られています。
疼痛が主体の病態で、薬物療法・リハビリ療法の効果が薄く日常生活に困る程度の痛みに対してはブロック治療が効果的な場合があります。
当院での外来でおこなっているブロック治療は以下の通りです。

ブロック治療

○ 選択的神経根ブロック
○ 椎間板ブロック
○ 椎間関節ブロック
○ 腰椎硬膜外ブロック 仙骨裂孔ブロック
○ 星状神経節ブロック

*頸椎神経根ブロックは入院にておこなっています。
*腰椎硬膜外ブロック・星状神経節ブロックは麻酔科医によっておこなっています。
*選択的神経根ブロック 椎間板ブロック 椎間関節ブロックはレントゲン透視(イメージ)下に行われます。

一部の方で、上記の保存療法にもかかわらず、長期に渡って日常生活に支障をきたす疼痛、進行性の症状の増強、運動麻痺、神経の腫瘍などは手術を含めての検討が必要となってきます。

脊椎・脊髄を扱う手術は、整形外科全体の手術の中でも難易度の高いものです。 私たちは今までに多くの脊椎・脊髄手術を手がけてきましたが、患者様に保存療法、手術療法の選択に関して充分に説明し納得して いただいた上で、最善の治療を進めて行く事を心がけています。

当院では脊椎・脊髄手術は2004年からLeica社製手術用顕微鏡(上図参照)で行っています。手術用顕微鏡では明るく拡大された三次元的視野が得られるため、繊細さが必要とされる脊椎脊髄手術であっても安全に手術が出来るのが特徴です。手術用器械も顕微鏡・内視鏡用の開窓器・器具などを使用し筋肉・骨組織・神経組織に対して低侵襲手術をおこなっています(棘突起縦割椎弓拡大術・skip laminotomy・顕微鏡下外側開窓術など)。

患者様の不安の一つとしての手術後の痛みがありますが、手術後の疼痛管理にも工夫を行い、術後疼痛を極力減らしています。術翌日からの早期のリハビリテーションがスムーズに行えるように心がけています。約95%の術後の患者様で翌日から歩行が可能です。またほとんどの患者様は、術後2週間で退院・日常生活への復帰が可能です。

近年は高齢者の腰部脊柱管狭窄症の手術が増加しています。70歳〜80歳代、場合によっては90歳代の患者様が増えています。 ほとんどの手術後の患者様が、軟性(ダーメン)コルセットもしくは頚部カラー固定で、手術翌日から歩けるために術後の筋力低下、認知症などの合併症がまず無い事から、 今後も手術適応症例の方は増えて行くと思われます。

当院は福岡市内でも有数の脊椎・脊髄手術症例数(年間200例前後)を誇っています。整形外科開業医・一般病院・脊椎外科が無い総合病院からの紹介患者様が多いのも特徴です。 脊椎・脊髄手術は同一疾患でも、手術方法が病院施設間でも違うのが現状です。多くの場合は骨性要素・靭帯性要素・椎間板性要素などの神経圧迫や椎間の不安定性などが疼痛の原因となっています。

手術術式は大きく分けて除圧術と固定術に分けられます。
術後の不安定性の原因となる脊椎後方支持組織の主要な要素である椎間関節を顕微鏡下に極力温存する低侵襲手術をおこなう事によって、除圧術での治療成績を向上させています。
当院での過去5年間の固定術の割合は全脊椎症例の5〜15パーセント程度です。

除圧術の特徴
・筋肉剥離、骨切除量も少なく本来の椎間の動きが温存される。
・隣接椎間での障害は長期的に少ない。
・手術時間・出血量の軽減、感染を含めた合併症の頻度が少ない。
・万が一感染が起こっても長期化の恐れはまず無い。
・将来の不安定性(すべり)増大の可能性、椎間板性腰痛・不安定性腰痛の遺残の可能性がある。
※当院では、椎間関節を極力温存し不安定性の増大の危険性を減らしています。


プロアクティブにきびは、トンで見られる

固定術の特徴性
・骨癒合すれば不安定性は解消されすべりの進行は無い
・腰痛遺残は少ない?
・金属などのインプラントを抜釘せず残した場合、長期的に骨粗鬆症椎体骨折を起こした場合のトラブルの可能性?
・骨そしょう症にインプラント挿入するとヌカに釘状態になり脱転したりする可能性
・手術時間延長や術中出血量などの増大 周術期の合併症の増加
・術後感染の場合は重症化・長期化の恐れ
・術後数年経過での固定した椎間の隣接椎間(上下の椎間)で障害(狭窄、ヘルニア、すべり)の可能性 椎体骨折(特に高齢者)など
*当院では椎体間固定(PLIF・TLIF)をおこなった症例は骨癒合確認後(通常2年後)スクリュー・プレートの除去を勧めています。

このように両方法には長所、短所がそれぞれにあります。
高齢者のすべり症、変性側弯症などに除圧術・固定手術どちらを選択すべきかは脊椎・脊髄専門病院間でも、学会などでも、大いに議論されて結論が出ていないのが現状です。
手術の適応、手術方法(除圧術・固定術)など、疑問点があれば遠慮なくご質問ください。
また他院へのセカンドオピニオンなども遠慮なくご要望ください。手術はご本人にとって、生涯における一大イベントの一つであるはずですから、最良の選択を充分吟味してご検討していただきたいと思います。
当院では手術方法や臨床結果などを、全国規模の脊椎・脊髄専門学会、地方会に年間5回以上の発表をおこない論文などを提出しています。
(研修活動参照)このような発表の場で、� �の施設(病院)の考え方など様々な議論をおこない、日々の治療法に関して向上させ改善させていこうと考えています。(文責 整形外科部長 藤原 将巳)

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術前検査について

外来で可能な検査はレントゲン撮影、MRI検査、CT検査(3次元CT)、責任病巣に対しての診断目的 椎間板造影・ブロック検査、神経根造影・ブロック検査を行います。
入院後、手術を前提とした患者様には全例脊髄造影検査、造影後CTを行っています。局所麻酔後、腰椎から針を穿刺し、脊髄液内に造影剤を注入し、患部のレントゲン、CTを撮影します。
検査後は8時間のベット上の安静が必要です。近年MRIの画像精度が良くなり脊髄造影検査を行わない施設(病院)もありますが、動態撮影(伸展、屈曲での神経の圧迫程度)やCTの空間分解能(特に骨組織と神経の関係)はまだまだMRIより脊髄造影、造影CTが優れています。
脊椎・脊髄手術はミリ単位の精度を要求されますので、脊髄造影は必要な検査と考えます。検査に際しては合併症が起こらないよう細心の注意をはらって行っています。

*当院は入院後、術前検査→手術の流れでおこなっていますので、術前検査のみの入院、その後手術のための再入院の必要はありません。

代表的な疾患に関して疾患の概略、手術方法について述べます。 専門的な表現になりますので、 実際の手術説明(インフォームド・コンセント)の時は模型や写真などを使用してなるだけわかり易く説明を行っています。

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骨セメントによる経皮的後弯矯正術(BKP:バルーンカイフォプラスティ)について

骨粗しょう症の患者様は高齢化に伴い近年非常に増加しています。骨がもろくなってしまったため、日常生活の軽微な動作や転倒によって脊椎の圧迫骨折を起こす患者様が増えています。多くの場合、激しい腰痛・体動痛が出現し動けなくなります。治療としてはまず第一に保存療法を行います。入院による安静、ギプスもしくはコルセットを作成し、薬物療法も同時に行います。コルセット装着後、一週間程度で徐々に起立、歩行などのリハビリテーションを施行し、日常生活への復帰をめざします。一方、保存的治療にもかかわらず骨融合が得られず、偽関節になる症例も10−20%報告されています。神経障害が出現しなくても偽関節による腰部の体動痛が強い場合、手術侵襲の小さな経皮的後弯矯正術または経皮的椎体形成術(BKP:Ba lloon KyphoPlasty)が適応となります。BKPは1990年にアメリカで開発された新しい治療法です。アメリカ・ヨーロッパでは、すでに70万以上の症例経験があります。日本においては、2005年9月〜2009年5月まで国内臨床治験を行い、その有効性と安全性が確認されました。2010年に厚生労働省の承認を得て、2011年1月より保険適応が認められています。施行可能な認定基準として、日本脊椎脊髄病学会の認定指導医もしくは日本脊髄病学会の専門医が常勤する事、BKP特定の専門トレーニングを受けた医師のみが行うこととなっています。当院はBKPを実施できる施設として認定されており、2012年3月より当院でもBKPを実施しております。

<手術適応>
骨粗しょう症による1椎体の脊椎圧迫骨折で、十分な保存的治療によっても疼痛が改善されず、日常生活に支障のある症例

<手術方法>←クリックすると手術方法が表示されます
・全身麻酔での手術(日本麻酔下学会認定指導医が担当)
・放射線イメージ(2台使用し、2方向から立体的にガイドピンの位置を判断)
・傷口は1cm程度(背中側に2カ所)、出血は少量
・手術時間は1時間
・翌日から軟性コルセットを装着し起立歩行訓練開始可能(アメリカでは日帰り手術だそうです)


サンディエゴ、カリフォルニア州にある行動疼痛管理

<合併症>
全身麻酔における危険性
セメント注入時の危険性:セメント漏出(血管内迷入を含む)、肺塞栓・神経障害
※BKPのため開発された高粘調度のセメントを使用することにより危険性を軽減
隣接椎を含めた他の椎体の再骨折 2年以内に10〜20%との報告あり

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腰椎性疾患

腰痛は国民的な愁訴といえます。
厚生労働省調査では男性で第1位、女性では第2位と極めて高い有訴率です。45歳以上では10人に1人、75歳以上では5人に1人が腰痛持ちです。
多くの場合は原因が特定出来ない非特異的腰痛です。急性期の強い疼痛時期にはNSAID剤(痛み止め)などを短期に服用し、 落ち着いてからは運動療法(腰痛体操など)により腹筋・背筋を鍛えることにより改善が期待出来ます。
非特異性腰痛には一般に手術適応はありません。

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腰椎椎間板ヘルニア

欧米では人口の約1%が罹患し、手術患者様は人口10万人当たり約45人です。
腰痛・下肢痛の代表的原因の一つに挙げることが出来ます。20〜40代に好発し比較的男性に多い傾向があります。下位腰椎(L4/5 L5/S)で主に生じます。 原因は多岐に渡りますが、労働やスポーツ、喫煙や遺伝的要因の関与が指摘されています。

全脊椎手術の中で、脊柱管狭窄症に並ぶ2大手術です。

近年自然消退するケースの報告が認められ、保存療法期間をやや延ばす傾向にあります。典型的な症状は強い腰痛で発症し、数日で下肢痛へと進展します。 保存療法で軽快に向かい、2カ月程度でヘルニアの消退に向かいます。消退の機序はマクロファージによる貪食と考えられます。ヘルニアの脱出形態では脱出型,遊離脱出型が消退の割合が高くなります。

臀部〜下肢痛のみ(坐骨神経痛)の患者様に関しては、手術顕微鏡下のマイクロLove法(部分椎弓切除+ヘルニア摘出術)を行っています。
皮膚切開は約2.5cmで椎弓の一部分を切除し黄色靭帯を除去し、神経を圧迫するヘルニアを摘出します。
手術時間は約30〜40分程度です。術中の出血量も軽微です。翌日からコルセットで独歩歩行可能です。長期経過における術後ヘルニア再発率は約3〜5%です。
術後早期の復職、運動再開や喫煙は再発率を上げます。(禁煙は明らかに再発を軽減します。頑張ってください 笑)
デスクワークでは術後1ヶ月、重労働では3ヶ月での復職が推奨されています。激しいスポーツは6ヶ月過ぎての再開が良いと考えます。
スポーツリハビリでは体幹筋トレーニング、柔軟 トレーニング、筋再教育トレーニングなどを併用して1ヶ月前後でのスポーツ復帰が試みられてきていますが、 再発率などはまだわかっていませんので、充分に患者様と相談しての開始となります。

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術後再発腰椎椎間板ヘルニア

全国的な調査では腰椎椎間板ヘルニア手術術後の再発率は約3〜7%といわれています。
術後3ヶ月の重作業・スポーツの禁止、禁煙などが予防に大切です。再発した場合はまずは薬物療法・神経根ブロック治療などで経過を診ます。
日常生活に支障がある症状の持続がある場合はやはり再手術の検討が必要です。初回手術よりやや骨切除を拡大したマイクロLove法(部分椎弓切除+ヘルニア摘出術)、 早期の再発や手術所見でヘルニアの脱出孔が広い症例、術後癒着が高度と思われる症例には腰椎後方経路椎体間固定術(PLIF)も検討します。

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腰部脊柱管狭窄症

タレントのみのもんた氏が手術をした事で一躍有名になった疾患です。

高齢化が進み、非常に患者様が多くなっています。 腰を伸ばすとお尻から下肢に痛みが走ったり、歩くとだんだんふくろはぎやお尻に痛み、シビレが出現して長く歩けない、腰かけたり、しゃがみ込むと下肢の症状が改善する、 自転車は全然問題ない、などが特徴的です。
〈腰部脊柱管が骨性あるいは軟部組織性など様々な要因で狭小化し、馬尾神経や神経根を圧迫して症状を発症させる症候〉神経組織の機械的圧迫とそれによる血行障害の関与が考えられています。
間欠性跛行(歩くと痛み、休むと治る)が特徴的です。特に腰を前に曲げる前屈位で軽快します。3つのタイプが存在します。

神経根型
・片側の腰部から下肢にかけて痛みやシビレが出る坐骨神経痛に似た症状が特徴です。

馬尾型
・両側の下肢のシビレが主体。加齢とともに症状は徐々に悪化していく傾向があります。
異常知覚や下肢の脱力感などが認められます。症状が重症化すると頻尿・残尿感・便秘といった排尿・排便障害をきたします。
勃起不全などの性機能不全が起こる可能性もあります。逆に歩行後に持続勃起(プリアピズム)症状が出ることもあります。手術適応症例がほとんどです。

混合型
神経根型+馬尾型の合併


アルバカーキの痛みのクリニック

治療法
腰部脊柱管狭窄症は、初めは薬物療法やリハビリ治療などの保存療法を行うことが主体です。
除痛目的に消炎鎮痛、末梢血管拡張作用のあるプロスタグランジンE1誘導体製剤(オパルモンなど)の内服治療、疼痛が強い時は神経根ブロック治療などを外来でおこなってみます。
神経根型は上記保存療法で緩和される事があります。馬尾症状で保存療法が無効な場合手術を考慮します。
また平地で500m以上歩けない場合などは手術適応となります。膀胱・排尿障害、性機能障害の場合もなるだけ早い手術の検討が必要になります。

当院での手術方法
圧迫された神経を除圧します。圧迫の主因は黄色靭帯です。
背中からの手術ですが、腰椎は身体の大切な支持組織ですから、神経の圧迫を確実に除去しながら、骨組織(椎間関節)の切除はなるだけ少なくする必要があります。
腰椎棘突起の尾側のみを縦割し腰筋群の骨からの剥離を最小限とした低侵襲の拡大椎弓開窓術を行っています。
神経周囲の剥離操作(骨切除・黄色靭帯の剥離)には手術顕微鏡下に安全に行っています。
椎間関節をほぼ温存した棘突起縦割式トランペット型椎弓拡大開窓術を行い、術後不安定性を起こさないよう注意しています。
縦割した棘突起は孔を開け、再度縫合し再建しています。 1椎間の手術時間は1〜1・5時間、2椎間では2時間程度で、出血量は100cc以下です。
術後は翌日から軟性コルセットで独歩もしくは歩行器で歩くことが可能です。 術後の入院期間は約2週間です。
60歳以上の患者様がほとんどで、強い腰痛を伴うことはまずありませんので、 基本的には金属による固定術である腰椎後方経路椎体間固定術(PLIF)まで必要は無いと考えます。

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腰椎変性すべり症

腰部脊柱管狭窄症同様に脊柱管の狭小化がおこります。そのため症状は脊柱管狭窄とほぼ似ています。 椎体の間で通常上位(頭側)の椎体が前方(お腹側)に滑ります。レ線、MRIで確認します。 治療法は腰部脊柱管狭窄症とほぼ同様です。すべりの強い患者様は狭窄症より若い年齢で発症する場合もあります。 保存療法が無効な場合やはり手術の検討が必要です。 シビアな腰痛を伴っていない場合が多いのと、椎間関節の2/3以上の温存可能な場合が多いので、当院では除圧術を施行する場合がほとんどです。 脊柱管狭窄症と同様に棘突起を縦割、腰筋群の剥離を最小限とした低侵襲の拡大椎弓開窓術を行っています。 なるだけ椎間関節を温存した棘突起縦割式トランペット型開窓術を行い、 術後不安定性を起こさないよう特に注意しています。当院での術後にすべり椎が再度進行し、再手術をした症例は今のところありません。 適応症例は少ないですが、腰痛の強い症例、術前不安定性の強い症例(レ線動態撮影、すべり率などで検討)椎間関節の温存が難しい症例 (CTでの椎間関節の形態、神経圧迫状態の検討)に関しては、腰椎後方経路椎体間固定術(PLIF)を行います。

*除圧術・固定術の術式が病院間で意見が分かれる疾患です。 すべり症ほぼ全例に対して腰椎後方経路椎体間固定術(PLIF)もしくはTLIFや後側方固定(インプラント挿入)を おこなっている脊椎病院もあります。固定をしない場合、再狭窄(すべりの進行)の危険性はあるわけです。そのため、顕微鏡下に関節をなるだけ温存した除圧術を試みています。

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腰椎分離すべり症

50代以下の方は腰痛を伴う場合が多く、腰椎後方経路椎体間固定術(PLIF)が必要になる場合が多くなります。 腰痛が無く神経症状のみで、椎間関節が温存可能な場合、棘突起縦割式トランペット型開窓術+分離部除圧で対応できる場合もあります。

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頚椎症性脊髄症

両手の巧緻障害(はしやボタン掛けが出来ない)両手のシビレ、脱力感 歩きにくさ、ツッパリ感などが典型例の症状となります。 進行例では四肢麻痺がより重症化し膀胱機能障害(おしっこが出来ない、回数が多い、残尿感、失禁)や便秘がおこります。 シビレの範囲、筋力低下の部位は、頸髄の障害部位によって違ってきます。症状は段階的に進行する場合が多いです。 先天的に脊柱管が全体的に狭い場合や多くの頚椎後縦靭帯骨化症(0PLL)の場合は、 頚椎後方からの展開による頚椎椎弓形成術(桐田―宮崎法)を行っています。 手術中の脊髄除圧の確認に、術中の超音波エコー検査を行っています。 症例によってはより低侵襲のskip laminotomy(白石法)を選択する場合もあります。 1,2ヶ所の頚椎前方からのヘルニアや骨棘などの圧迫の場合は、前方固定術(腸骨より採骨した半層骨を移植…国分法)を行っています。 後方の手術は約1週間の簡易ソフトカラーの固定、前方手術の時は約3週間のカラー固定が必要です。

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神経腫瘍

近年、外来のMRI導入により偶然発見されるケースが多くなっています。 当院の症例では馬尾腫瘍が最多です。 顕微鏡下に硬膜を切開して腫瘍を摘出し、硬膜を再縫合します。当院での過去の症例は髄膜腫、神経鞘腫、paraganglionなどです。 過去6年の短・中期成績ですが今のところ再発症例はありません。手術後は定期的な外来でのMRI検査による経過観察が必要です。

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頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)


脊椎の椎体後壁の後縦靭帯が肥厚・骨化して脊髄を圧迫する疾患です。頸椎のみならず、胸椎や腰椎にも発生します。 骨化には遺伝的な背景があるとされ基礎的な研究が進んでいますが、根本原因は不明です。骨化を抑える薬剤は今のところ無いです。 男性が女性の2倍程度多く、白人は0.1%前後なのに日本人は2~3%と多い傾向にあります。骨化は成人になってから徐々に進行し、 脊髄症の発症は50歳前後が多いです。初めの症状は四肢のシビレから発症することが多いです。次第に箸が使いにくい、 書字がしにくいなどの巧緻運動障害や会談で手すりが無いと不安、歩行がしにくいなどの症状が明確になってきます。 日常生活が不自由な状態になれば手術適応となります。手術は最低限神経症状の進行の停止が目的となります。 手術により症状の悪化や、頸部痛の増強、頸椎の動きの制限などの障害も遺残する可能性があります。手術方法としては 前方からと後方からの手術があります。多くの場合、頚椎椎弓形成術(桐田―宮崎法)を選択する場合が多いです。限局した骨化、 脊柱管の60%を越える骨化がある場合はた前方からの除圧(骨化浮遊術)を検討する場合があります。全体的に難易度が高く、 合併症の頻度が高い手術なので、術前にインフォームドコンセントを特に時間をかけておこなっています。

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頸椎椎間板ヘルニア

頸部を伸展(天井を向く)と肩から上肢に痛み(シビレ)が放散します。また肩甲骨部に痛みが出現することもあります。 頸椎の椎間板が突出し左右の神経根に刺激を与える事によって痛みを誘発します。外来ではMRIで画像診断をします。 筋力低下や脊髄症状が無い場合は原則として保存療法をまず試みます。薬物療法(消炎鎮痛剤、疼痛が激しい場合はステロイド剤、 リン酸コデインなど)、頸椎カラー固定、頸椎持続牽引(入院が必要)などです。薬物療法、安静療法でほとんどの方が症状の改善が認められます。 疼痛が強い場合は頸部選択的神経根ブロック(入院が必要)、下位のヘルニアの場合は星状神経節ブロックも有効な場合があります。 多くの場合は3〜4週間で疼痛は軽快します。腰椎椎間板ヘルニア同様自然消退の報告もあります。強い疼痛が遺残して保存療法が無効な場合、 また筋力低下などがある場合、脊髄症状の出現など場合は手術治療を考慮します。以前は前方からの手術が主体でしたが、 現在はヘルニアの位置によって手術方法が異なっています。正中型のヘルニアの場合は顕微鏡下にヘルニア摘出し頸椎除圧前方固定術 (腸骨より採骨した半層骨を移植…国分法)をおこなっています。左右の椎間孔部のヘルニアは後方からの小切開による 顕微鏡下椎間孔開窓術+ヘルニア摘出術(key hole foraminotomy)をおこなっています。

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腰椎分離症


発育期のスポーツ選手に好発する脊椎の疲労骨折です。18歳以下のスポーツ選手の腰痛の20〜40%を占めると言われています。 スポーツ中に繰り返されるストレスによる腰椎関節突起間部に生じる疲労骨折です。男女差があります。 最近の報告では日本人男性7.1% 女性4.0%程度です。症状の特徴としては、腰痛が主症状です。 腰痛は、スポーツ中やスポーツ後に生じることがほとんどで、日常生活中に痛くなることは少ないですが、 疲労骨折が生じ、内出血がひどい場合では、普通の動作でも痛くなります。腰痛は、後ろに反ったときに増強するという特徴があります。 単純レントゲンの斜位像はっきり分かる場合は腰椎分離症が完成して終末期の状態で、保存法で骨癒合する確率は少ないです。 MRIとCTによる診断が必要です。CTでは初期、進行期、終末期の3つの時期にわけられます。終末期はい偽関節の状態で、 骨折部が固くなってしまっており、骨癒合を期待するに手術が必要になります。非常に早期の骨折ではCTでも診断が不確実な時があります。 その場合はMRIが有用であるとの報告が徳島大学から報告されています。MRI(T2撮影脂肪抑制が有用)で、 椎弓根といわれる部位に浮腫が出現した場合、超早期や早期の腰椎分離症と診断します。これは非常に診断価値が高いものです。 MRI はレントゲンやCTと異なり、X線を使わないので、子どもの体に低侵襲の検査です。CTによる診断での病期により治療法は異なります。 初期のほとんどの症例と進行期の約半数ではコルセット装着を3〜6か月行い、スポーツを中止すると骨折部は修復され癒合します。 MRIでの前述のるサインが見られる場合、高率に癒合する可能性があります。発育期の腰椎分離症治療の理想的ゴールは、骨修復・骨癒合と考えておりますので、 この時期に確実な診断を行い、保存的治療を始めることが重要です。しかし、腰椎分離症が発見された時、 すでに終末期になっている場合では、保存的治療で骨折部が癒合することはありません。スポーツ中の腰痛をコルセット、安静、内服、 シップなどで和らげることが治療の中心になります。治療により腰痛を管理さえすれば、腰椎分離症でも運動可能ですし、プロスポーツ選手にもなれます。 腰椎分離症は、早期発見が重要な疾患です。骨折早期に診断されれば、体幹装具で治療すれば骨癒合が期待出来ます。 進行期、終末期になると癒合は期待出来なくなります。難治性の腰痛が遺残した場合は手術治療が選択されます。 手術治療としては、分離部修復術(骨移植)で分離椎弓を固定するため椎弓根スクリュー+wiring法(テクミクロンテープを使用) もしくは椎弓根スクリュー+ロッドフック法を行っています。高齢で神経根刺激症状だけの患者さんには分離部除圧術で行ける場合が多いです。

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